「南京事件」、ネット上で学ぶ難しさ |
近現代史を学ぶことは、つくづく難しい。
資料は多い。しかし「当事者」としての引力に囚われすぎないように気をつけるのは大変なことだ。 ふとしたきっかけで、「南京大虐殺」について調べている。 といってもその筋の専門家でもないので、とりあえずぐぐってみるだけだが(苦笑)。 「虐殺」否定派のサイト、随分とネット上にあふれかえっている。 どれを見ても論理展開は大差ないので、あまり真面目に読むと疲れてしょうがない。 一方、肯定派のサイトも、実はあんまり面白みがない。 「再検証なんてやるまでもない」と高をくくっているサイトから、学ぶべきことはあまりないのが現状だ。 この状況、何とかならんのか? 否定派の論理は、かなり危ういというか、最初から破綻しているものが多い。 一例だけ挙げれば、「人口20万の南京で30〜40万も犠牲が出るはずがない」という主張。 20万は城内だけの数字に過ぎないし、「虐殺」が指摘されている地域はそれより遥かに広域である。 (ついでに付け加えておくと、日本の実証研究者で犠牲者数30〜40万を主張する人はいない) 言ってみれば「関東大震災の被災者は山手線内の居住人口より多いから嘘っぱちだ」というくらい無茶である。 (ちなみに上の例えは統計的なデータを参照してません。念のため・・・) 肯定派の論理や論拠についても、自説に都合のよい形でしか触れていない。論争の全体像をつかむためには、いちいち論理を検証したり、触れられていない論拠を別に引っ張ってくる必要がある。 とはいえ、大抵の人にとって、こんな論理の点検作業なんてやってられないはずだ。こちとら、この問題についてどういう認識を持っておけばいいのか、確認したいだけなのだから。 そういう意味では肯定派のサイトも、大した知見を得られないという意味では、同様に役に立たない。 政治的意図から自由な立場で、ひたすら事実検証をするサイトでなければ、使えない。 わずかな時間で調べた範囲だが、その限りで一番簡便かつ有用そうなのは、Wikipediaの「南京大虐殺」の項目だった。 情報がちと古いが(大学時代に習った内容と大して変わらんし^^;)、論争の要点がよく整理されている。 より詳しいサイトとしては、その項目からリンクが張ってある「南京事件 小さな資料集」がお勧め。 URLは、http://www.geocities.co.jp/WallStreet/8503/ ここで行っている作業は、主要な文献の読み合わせに過ぎないが、論争の「現場」を伺い知るには十分だと思う。 私のようなぐうたら人間にはとても真似できない、地道な作業の積み重ねに、ひたすら敬意を表したい。 私自身は、南京の「大虐殺」記念館に2回ほど行っている。 不思議なことに、見かけた観光客は日本人の方が多かった(苦笑)。 あんなにへんぴなところにあるのに・・・それはそれで凄いことだと思う。 真剣に、歴史の真実を知りたい日本人の若者は、思いの外たくさんいるのだ。 彼らが「真実」にアクセスできないがために、無意味な軋轢を生むという事態だけは、避けなければ。 もっと、プロパガンダや政治的圧力に左右されず、きちんとした検証ができるようにしなければ、と願うばかりである。 |
by hirokira1
| 2004-05-31 21:33
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